2021.09.09

対談・インタビュー

【インタビュー】G-002 出渕賢史

今シーズンから旧トップリーグで活躍した山村亮スクラムコーチが就任して2ヶ月半が経過しました。昨年までのチームの課題でもあるセットプレーに修正をかけている中、プロップで身体を張り続けている出渕賢史選手に現在の心境をインタビューしました。

(取材日:2021.8.28)

『15分の1の仕事をすること』

――今シーズンがスタートして2ヶ月が経過しました。ここまで順調ですか?

 スタートする前に怪我をしてしまい、最初の入りはトレーナーの安斎さんにお世話になりました。出遅れてしまうか不安でしたが、何とか間に合い今は順調(?)にトレーニングできています。

――2020-2021シーズンを振り返ってどう感じていますか?

 正直、長く感じたシーズンでした。試合ができない分、練習に費やす時間が多くてモヤモヤしていました。そこで自身の怪我で最初の公式戦2試合に出場できなくて、不完全燃焼のシーズンでした。

――釜石戦の2連敗についてはどう感じていますか?

 負けて悔しい思いです。そもそも釜石戦というより、私たちは上位チームにも勝つことを目標にしていましたので、単純に自分たちの実力がなかったと感じています。

――公式戦の前半2試合はノンメンバーでした

 試合に出るために練習をしていたので出場できないことでチームに迷惑をかけたと思います。本来であれば初戦から試合に出場して、チームに貢献をしなきゃいけなかったんです。不甲斐ないですね。

――試合に出れないとき、気持ちの落ち込みはありましたか?

 いえ、試合に出場してチーム貢献することは言うまでもありませんが、ノンメンバーでもチームの勝利のために貢献できることはいくらでもあります。気持ちを切り替えて準備するメンバーをサポートしていました。やはりチームのために何ができるかだと思います。

――今シーズンの自身のターゲットは?

 来年スタートする新リーグでは、私たちは一番下(ディビジョン3)からになるわけです。そこで優勝することをターゲットにしたいですね。また、個人的には怪我が多いので、怪我をせずシーズン通して活動していくことをターゲットにしたいです。まずはこのコロナ禍の状況が落ち着き、多くのお客様がスタジアムに足を運んで、盛り上がってくれることを望んでいます。自分一人でやっているわけではないので、何とも言えませんね。

――プレーでこだわっていることはありますか?

 スクラムって言いたいですが、結果も出ていないので、何とも言えないです。でも常にこだわり続けていますし、今シーズン一番成長させたいところです。

――今シーズンは山村亮スクラムコーチが就任しました

 すごくありがたいです。昨年もスクラム練習に費やす時間も少なかったので、満足いくトレーニングができなかったのが本音です。今年はスタートからスクラムを強化していく方針を示してくれていますので、今は充実したトレーニングが行えています。

――フィールドで行う自身の仕事はスクラムですか?

 いえ、一言でいうと15分の1の仕事をすることです。

――それはどういうことですか?

 スクラムやセットプレーだけではなく、フィールドプレーにおけるスピードだったり、判断だったり、、、瞬時の判断を求められる競技なので、迷わず判断することと、迷ってもしっかりコンタクトしていく姿勢を無意識にできるようすることですね。

『見えないところで努力する』

――出渕選手は他のチームから移籍されたんですよね

 はい、豊田自動織機で5年プレーしてクリタに入部しました。

――クリタラグビーの魅力は何ですか?

 チームとして雰囲気の良さです。他のチームはないプレースタイルもあり、数少ない仕事とラグビーの両立を図って上位進出を狙っているチームなので魅力があります。

――移籍当初は環境に慣れるまで大変でしたか?

 最初はきつかったですよ、仕事とラグビーの両立が(笑)。全然慣れなくて体調に変化がでて苦しかったことを覚えています。

――今年で31歳となりました。気持ちに変化はありますか?

 多少、気持ちに余裕が出てきました。昔は「俺が!俺が!」というまえのめりの気持ちが大きかったです。年齢を重ねると考え方も取り組み方も変化していきますね。

――体力的にはどうですか?

 確かに若い頃と比べると疲労回復に時間を要しています。でも体力的に落ちているとかはあまり意識もしていませんし、落ちているとも思っていないです。

――これからも成長していける感覚があるんですね

 もちろんです。他の競技を見てもサッカーのカズさん(三浦知良選手)だったり、イチローさん(元メジャーリーガー)だったり、年齢を重ねても進化している良いお手本がいますから。ただ、この二人は年齢どうこうより、見えないところで積み重ねている努力の賜物だと思います。

――クリタの選手は30歳代で活躍している選手が少ないですね

 そうですね、今は私含めて3人です(本村旨崇と中尾光男)。他のチームには30代後半の選手がいますけど、ラグビーに専念できる環境があるからだと思っています。クリタは仕事とラグビーを常に両立させなければならないのです。当然仕事が忙しくなると練習に参加することも難しくなります。けれど、その環境が悪いわけでもないと思っています。そこは努力する範囲なのかなと。

――これからのラグビー選手として何を目指していきますか?

 もちろん長くプレーできるようにしたいです。それは、あくまでも理想であって、長く続ける難しさも感じています。限られた時間を自分なりに楽しく取り組みたいです。ラグビーを辞めるときにクリタでプレーできて良かったと思えるように、今の時間を後悔なく過ごしていきたいです。あとは自身で得た経験を若い世代に継承していくことです。

――コロナ禍1年以上続いていますが、この環境で何か得られましたか?

 思うように行動できない環境でありながらも、ラグビーを行える環境を整えてもらえていることの感謝する気持ちです。ラグビーができる環境あるってありがたいことです。再認識させられました。

『ラグビーがあるから今の自分がある』

――ラグビーの面白さを教えてください

 色々な選手がいますし、多様性が求められますし、身体の大きい小さい関係なくプレーできることですね。またボールを全員が繋いでトライを奪いにいく。会社と一緒ですよね。一人がしっかりと仕事をまっとうすることで組織が機能するわけなんです。1+1が2ではなく、3にも4にもなるのがラグビーの魅力だと思います。

――プロップの「3番」というポジションについて教えてください

 スクラムでは要であり、一列(スクラムの最前列)を任されているわけで、私のポジションが相手に負けるとスクラム全体がうまく機能しなくなってしまう重要なポジションだと思います。

――3番のポジションはいつから始めたのですか?

 小学校からプレーしています。でも高校時代はフランカーやNo.8の経験も少しあるんです。でも3番が一番長いです。バックスは足が遅かったので一度も経験はないです(笑)。

――応援をしてくださるファンはどんな存在ですか?

 ありがたい存在ですね。家族もそうですし、数あるチームの中でクリタを選んで応援してくださっているので嬉しいです。

――クリタラグビーのどこを見て欲しいですか?

 去年とは違うチームづくりをしています。なので、変化を見て欲しいです。あとスクラムを見て欲しいです。

――ファンへのメッセージをお願いします

 コロナ禍の状況で暗いニュースばかりだと思いますが、ラグビーの魅力を伝えて、少しでも明るいニュースを昭島から皆様に届けていきたいですね。今年一年間しっかり取り組んでいきます。

――最後にあなたにとってラグビーとはなんですか?

 自分自身を作ってくれたものです。最初は親の勧めで始めたラグビーですが、ラグビーあるから今の自分があるのだと思っています。さまざまな人との出会いを作ってくれたのもラグビーなんです。

――ありがとうございました

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