2021.09.14

対談・インタビュー

【インタビュー】G-003 トム・イングリッシュ

2019年にクリタファミリーとなったトム・イングリッシュ選手。不動のアウトサイドセンターのポジションを昨シーズンはフル出場し、チームに欠かせない存在であり続けました。これからの自分とこれからのラグビーについてインタビューしました。

(取材日:2021.9.1)

『シーズンを通してベストな選手』

――まず、昨シーズンを振り返ってください

コロナ禍の状態がずっと続き、私も初めての経験で難しいシーズンでした。今シーズンに入るためには良いシーズンだったと思える貴重な経験になりました。望んだカタチではなかったですが、学びとして次に生かしていきたいと思います。

――昨シーズンの釜石戦2連敗についてどう感じていますか?

チームとしてしっかりと準備ができていなかったと思います。シーズン前のキープレーヤーの怪我などで、万全のチーム状態で戦うことができなかったことも要因です。2度も釜石さんにチャレンジする機会があったにもかかわらず負けてしまったのは残念で仕方ありまませんし。1度戦えば相手が見えているはずです。本来であれば1度負けたときに、しっかり準備はできたはずです。物凄くフラストレーションが溜まりました。

――今シーズン、チームに合流する前に隔離生活があったと聞きました

オーストラリアに帰国した途端にロックダウンになりました。帰らなければよかったと後悔しています(笑)。今となってみればこのコロナ禍の状況は生活の一部になっていますが、現状のオーストラリアと比べると、日本の方が多少自由ですね。

――今シーズンの自身のターゲットを教えてください

いつも考えていることですが、練習でも試合でも常にベストを出し切りたいと思っています。シーズンを通してベストな選手として活動していきたいです。

『貪欲に日本のこと、チームのことを知り尽くす』

――セブンズのオーストラリア代表やレベルズ(スーパーラグビー)で活躍をしていた当時、日本のラグビーに対してどんなイメージがありましたか?

日本のチームに対する印象は、フィットネスやスキルの高さ、ハードワークをしている印象です。セブンズのときに日本代表と対戦した際は、最後の最後まで気が抜けなかった試合だったと記憶しています。

――その思いは今でも変わりませんか?

もともとレベルズでは堀江(翔太、現埼玉パナソニックワイルドナイツ)、稲垣啓太(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)、松島(幸太朗、現ASMクレルモン)などといったレベルの高い日本人プレーヤーとプレーしていましたので、印象の違いはなかったです。クリタを見ますと、同じ日本人でも環境が大きく異なります。大前提に仕事がありますし、ラグビーを仕事と捉えていないことです。だからラグビーを楽しむことができています。クリタの選手と触れ合って、気づかされたことがあります。自分がなぜラグビーを始めたのか、自分自身の原点を思い起こさせてくれた大切なきっかけになりました。

――クリタの選手で注目する選手はいますか?

クリタは若い選手を中心にすごいエネルギーを持っています。特に匡汰(中村)と石井(洋介)は素晴らしいです。あと林田(拓朗)や中島(拓也)ですね、中島とプレーすることを私自身楽しんでいますよ。ものすごくタフな選手ですし、彼が私の内側をプレーしてくれると私も自信持ってプレーに集中できますね。

――クリタの良いところはどこですか?

まず、今シーズンからの新しいコーチングスタッフが私たちの成長を望んでくれていますし、選手たちがよくなりたいと心から思えているところが良いと思います。毎日の練習を重ね、振り返りそして学んでいく雰囲気が良いですね。

――クリタがさらに進化するためにはどうすれば良いですか?

外国人選手の観点で話をすると、日本人選手とさらに繋がりを深めていくことだと思っています。文化も当然違いますし、言葉も違います。私はこのチームのために来ているわけですから、貪欲に日本のことやチームのことを知り尽くすために勉強を惜しみなくする姿勢を続けていかなければならないです。ラグビーは、お互いを信頼し合う気持ちが重要だと思います。だからこそ、言葉の壁を無くすために私は努力をし続けて、フィールド上でも信頼も強くしていきたいです

――日本でプレーしているオーストラリア出身の選手とオーストラリアと日本のラグビーの違いについて話したりしますか?

クエイド・クーパー(花園近鉄ライナーズ、現オーストラリア代表)とはよくそのような話をしていますね。彼はものすごく日本を愛していて、近鉄はクリタと違い外国人選手が多く在籍しています。だから、彼はやりやすいのではないかと思います。彼が日本に来る条件として、プレーすることはもちろんのこと、彼の持っているものを伝えていくことも含まれていると思います。彼はプレー以外のところでも楽しんでいます。

――今年で30歳になりました。これからラグビー選手として何を目指していきますか?

私は競争心の強い人間で、戦うスピリットが好きなのです。なので1つは競争心を持ち続けること。もう1つは、ラグビーを楽しむことです。この2つをこれからも胸に秘めていきたいと思います。それと同時に自分たちの持っているものをこの日本に、このクリタに還元していきたいと思います。私はセンターとして、アンディーは10番として特化したスキルを持っていますので、日本人選手の成長に貢献したいですね。

――セカンドキャリアについて考えたりしていますか?

オンラインを通じて大学の学びをしています。ラグビー選手として終えた後の準備として資格を取得するなど、実は一昨シーズンから行っています。選手を終えた後もラグビーに関わっていきたい思いは強く持ち続けています。こういうプロチームのコーチや、私には子供がいるのでジュニアスクールのコーチなどしたいですね。

『ラグビーという贈り物』

――新リーグ元年はディビジョン3です。どこを目指していきますか?

もちろん1位です。ここは当然狙っていくべきです。ディビジョン3の良いところは、落ちる場所がないので上がっていくしかないカテゴリーです。他のチームを見ているわけではないのでなんとも言えませんが、去年の戦ってきたチームで構成されています。その時のイメージと現在の私たちのトレーニングを積み続けている状態を比べると、このトレーニングを継続し続けられれば十分1位になれると思いますし、なるべきだと思います。

――自身のプレーのどこを見てもらいたいですか?

ボールキャリーからのオフロードですね。そこを注目して欲しいですね。

――選手にとってファンの存在は心強いですか?

我々のチームを信じてくれる存在ですし、好きでいてくれて試合会場に足を運んでくれる大切で、かけがえのない大きな存在です。その多くのファンが試合会場に詰めかけてくれて、大きな歓声の中でプレーすること、当然プレッシャーもありますが、プロラグビー選手として求めていた最高のシチュエーションだと思います。その状況を作ってくださるファンの皆様には感謝しかありません。

――あなたにとってラグビーとは?

ラグビーに出会えたことが贈り物だと感じています。ラグビーを通じて色々な人と出会えて、色々な経験ができました。ラグビーをプレーしていたからこそ出会えた友人がいます。また、ラグビーをしていなければ日本に来ることもなかったし、このような人生を送れなかったはずです。大好きなことが仕事にできるのって私は恵まれていますね。

――ありがとうございました

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