今回の”私とWATER GUSH”は2021年9月に入社し今年で6年目を迎えるベテランの中村翔選手。幼稚園のころから続けてきたラグビー人生には、廃部という逆境も、仕事との両立という試練もありました。それでも彼は「ラグビーが純粋に楽しい」と言い切ります。そのまっすぐな言葉の背景に、いったい何があるのか語っていただきました。

気づいたら、グラウンドに立っていた
中村選手のラグビーとの出会いは、本人いわく「気づいたら始めていた」という微笑ましいものでした。
「幼稚園の年長の時に両親がグラウンドに連れて行き、気づいたら始めていました」
親に手を引かれてグラウンドに行ったその日が、すべての始まり。幼い中村少年がどんな気持ちでボールを手にしたのかは想像するしかありませんが、それから20年以上、彼はラグビーを手放さずにいます。長くやっていれば、当然つらいこともある。なかでも大きかったのが、怪我でプレーできない時期を経験したことだといいます。
「怪我でラグビーをできない期間もあったので、改めて思いましたが、ラグビーをプレーすることは純粋に楽しいです」
できない時間があったからこそ、プレーできることのありがたさが骨身に染みた。その経験が、今の中村選手の土台になっています。
グラウンドで表現したいのは「楽しそうな自分」
「ラグビーは自分を表現できる場所」と語る中村選手。では、グラウンドの上でどんな自分を見せたいのでしょうか。
「オンとオフの切り替えがあって、どんな時も楽しそうにプレーしてるなって見てほしいです」
SHというポジションはチームの心臓部とも言われ、試合の流れを読む判断力や、常にボールに絡む運動量が求められます。プレッシャーのかかる場面も多い中で、「楽しそうに」というのは実はとても難しいことかもしれません。でも、だからこそそれを見せることに意味がある。そう感じさせてくれる言葉でした。

クリタを選んだ理由
クリタウォーターガッシュ昭島に入るまでの経緯は、決して順風満帆ではありませんでした。
「クリタを選んだ理由は正直、他に選択肢がなかったというのがあります。コカコーラレッドスパークスが廃部になり、移籍先を探してた中で、最初にトライアウトの声をかけてくれたのがクリタでした」
所属していたチームが突然なくなるというのは、選手にとって想像を絶するショックです。それでも中村選手は前を向いた。
「その時はどんな条件でもラグビーを続けたいという思いで必死に頑張りました」
必死にトライアウトをくぐり抜け、たどり着いたのがクリタでした。しかし、入社してすぐに新たな壁が待ち受けていました。
満員電車、夜の練習、そして初めてのパソコン
コカコーラ時代はシーズン中の仕事はなく、ラグビーに専念できる環境だったといいます。しかしクリタでは、状況がまったく異なりました。
「クリタはシーズン中も関係なくフルタイム勤務してから、夜に練習です。毎朝満員電車に乗って通勤もあります。睡眠時間が短かったり、そもそもパソコンもまともに触ったことがなかったので苦労しました」
フルタイムで働き、満員電車で通勤し、夜にグラウンドへ向かう。その繰り返し。しかも、社会人経験のほとんどをプロ環境で過ごしてきた中村選手にとって、ビジネスの基本であるパソコン操作すら一から覚える必要があった。体力的にも、精神的にも、相当な壁だったはずです。
「最初の数年はキツいしか思いませんでしたが、仕事とラグビーを両立してくる価値があると近年では感じるようになってきました」
「キツい」から「価値がある」へ。この変化がすべてを物語っています。
100%を二つ持つということ
両立の日々の中で、中村選手が意識するようになったことがあります。
「仕事をする時は100%集中して業務に取り組み、ラグビーする時は仕事を忘れて100%ラグビーに集中して取り組むことを意識してます」
仕事もラグビーも、どちらも中途半端にしない。それは言葉にするのは簡単ですが、実践するには強い意志が必要です。さらに、この生活を通じて変わったことがもう一つあると言います。
「身近に感謝する人が増えたと感じます。家族はもちろんですが、会社の人達には本当に支えてもらっています」
仕事とラグビーを両立できているのは、自分一人の力ではない。その実感が、感謝という形で中村選手を変えていったのでしょう。
29歳が気づいた、残り時間の意味
将来の展望を聞くと、中村選手は少し考えてから、こう答えてくれました。
「気づいたら29歳で、幼稚園から続けてきたラグビーもプレーする時間って考えたら、やってきた時間よりこれから現役の時間の方が遥かに短いので、キツい練習や痛い練習などたくさんありますが、練習から楽しんでやりたいです。それを試合で表現したいと思います。そしてクリタでしっかりラグビーをやりきりたいと思ってます」
幼稚園から積み上げてきた時間より、これから現役でいられる時間の方が短い。その事実を静かに受け止めた上で、「だから楽しむ」と言える。この言葉には、20年以上ラグビーを続けてきた人間の覚悟と、ラグビーへの深い愛情が詰まっています。
チームとしての目標も、明確に語ってくれました。
「ここ数年は入れ替え戦も行けていないので、入れ替え戦に行きDiv.2昇格を成し遂げたいと思います」

ファンの皆さんへ
最後に、いつも応援してくれているファンの皆さんへ、中村選手からメッセージをいただきました。
「いつも応援ありがとうございます。リーグワン初年度からクリタにいますが、年々ファンの方も増えてきたと感じています。Div.2昇格を選手とファンの皆さんで成し遂げて、全員でクリタの価値を上げていけたら嬉しいです。引き続きよろしくお願いいたします」
「全員で」という言葉が印象的です。選手とファンが一緒に戦う仲間であるという感覚が、自然と言葉に表れていました。
おわりに
幼稚園で気づいたら始めていたラグビーが、20年以上たった今も中村翔選手の核にあります。廃部という逆境を乗り越え、仕事とラグビーの両立という新たな試練に向き合い、それでも「純粋に楽しい」と言い続けられる。そのまっすぐさこそが、中村選手最大の魅力ではないでしょうか。
昭島グラウンドでの練習や、観戦される試合で、ぜひ中村選手のプレーを目で追ってみてください。「どんな時も楽しそうに」そんな姿がきっとグラウンドに見えるはずです。














